フカフカ氏の生活

フカフカ市の市長は、フカフカ氏と呼ばれることになっていた。
Mr.　Fukafuka　は、市長の代名詞でありながら、固有名詞をなくして
　市長の、ニックネイム、アイドル名、なのであった。
第３５代Mr.フカフカの本名、住所すら、個人情報として秘匿されていた。
　初代フカフカ氏が誕生したのも､直接民主主義の発足によるものであり､
市長は､象徴的王として､規定の業務を遂行すればよい。

　地球は､二十八市に分かれており､フカフカ市には、直接民主主義者が住んでいる。
たとえば、チャイアン市は、代議制民主主義Kタイプが行われている。
　地球人は、何人も、二十八市を選択して移住する権利を有する。
　

　フカフカ氏は、山に向かって座禅していた。山寺の縁側に、夏の朝の日差しが
強まってきている。氏は、つと立ち上がった。風が無い。爆音がした。
　１８００ｃｃのオートバイである。

　市長にのみ与えられたサイドカー付きバイクは、電気モーターサイクル時代になっても、
許可されている、ただの１台である。この乗り物が､フカフカ市特異のロイヤル館を
　出て、街に出て行った。
　運転手、ライダーZ君がヘルメットなしのネットチャンピオンハットを、市長に渡した。
　それには、ゴーグルもついている。
　そこから、街に向かって、速度が上がった。